マルクス・アウレリウスの名言集|『自省録』に学ぶ、心を乱されないための言葉

Emoquote-心に響く名言集




人の言葉にいちいち傷ついてしまう。やるべきことは分かっているのに、朝、布団から出られない。そんな悩みを、2000年近く前のローマ皇帝も抱えていました。

マルクス・アウレリウス(121~180年)は、ローマ帝国の皇帝で、いわゆる「五賢帝」の最後のひとりです。ストア派の哲学を学んだ人物で、治世の多くを疫病や国境での戦争への対応に追われました。その戦いの陣中などで、自分自身に向けてギリシア語で書き留めた覚え書きが、のちに『自省録』として読まれるようになりました。

人に見せるために書かれた文章ではないからこそ、皇帝という立場にありながら、怒りや弱さと向き合い、自分を励まそうとする生々しい言葉が並んでいます。ここでは、19世紀のジョージ・ロングによる英訳をもとに筆者が日本語に訳し、英訳の原文を添えて紹介します。

目次

マルクス・アウレリウスの名言集

マルクス・アウレリウスの名言

「朝のうちに、自分にこう言い聞かせよ。今日わたしは、おせっかいな人、恩知らずな人、傲慢な人、うそつき、ねたみ深い人、人付き合いの悪い人に出会うだろう。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Begin the morning by saying to thyself, I shall meet with the busy-body, the ungrateful, arrogant, deceitful, envious, unsocial.(第2巻1節)

第2巻の冒頭の言葉です。一日の始まりに、嫌な人に出会うことをあらかじめ覚悟しておけ、というのです。すぐ後に「彼らがそうなのは、何が善で何が悪かを知らないからだ」と続きます。

相手を嫌うためではなく、腹を立てずにいるための準備として書かれている点が大切です。嫌な出来事を予想しておくと、実際に起きたときに動揺しにくくなります。

マルクス・アウレリウスの名言

「今この瞬間にも人生を去るかもしれないのだから、すべての行いと考えを、それにふさわしく整えよ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Since it is possible that thou mayest depart from life this very moment, regulate every act and thought accordingly.(第2巻11節)

『自省録』には、死を意識する言葉が何度も出てきます。それは悲観ではなく、限られた時間だからこそ、今の行いをおろそかにしないための言葉です。

マルクス・アウレリウスの名言

「人は誰でも、分けることのできない一点である、この現在だけを生きている。人生の残りはすべて、すでに過ぎ去ったか、定かでないかのどちらかだ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:…bear in mind that every man lives only this present time, which is an indivisible point, and that all the rest of his life is either past or it is uncertain.(第3巻10節)

過去を悔やんでも、未来を案じても、私たちが実際に生きているのは「今」という一点だけだ、という言葉です。過去の失敗や将来の不安で頭がいっぱいになったとき、意識を今に戻してくれます。

マルクス・アウレリウスの名言

「人が自分の魂の中へ退くほど、静かで、わずらいから自由になれる場所はどこにもない。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:For nowhere either with more quiet or more freedom from trouble does a man retire than into his own soul(第4巻3節)

人は田舎や海辺、山に隠れ家を求めるが、その気になればいつでも自分の内へ退くことができる、という文脈で書かれた言葉です。

休暇や旅行に出られなくても、少し目を閉じて自分の心の中に戻る時間は持てる。忙しい日々の中で、自分を立て直す場所がどこにあるのかを教えてくれます。

マルクス・アウレリウスの名言

「世界は移り変わり、人生は考え方しだいだ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:The universe is transformation: life is opinion.(第4巻3節)

前の言葉と同じ節の結びに置かれた短い一文です。世界は常に変化していて、私たちが人生と感じているものは、物事をどう受け止めるかという判断によってできている、という意味です。

出来事そのものは変えられなくても、受け止め方は選べる。『自省録』全体に流れる考え方を、最も短く言い表した言葉です。

マルクス・アウレリウスの名言

「『傷つけられた』という考えを取り去れ。そうすれば『傷つけられた』という不満も消える。不満を取り去れば、傷そのものも消える。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Take away thy opinion, and then there is taken away the complaint, ‘I have been harmed.’ Take away the complaint, ‘I have been harmed,’ and the harm is taken away.(第4巻7節)

誰かの言葉に傷ついたと感じるとき、その痛みの多くは、自分の中で「傷つけられた」と繰り返し考えることから生まれている、という指摘です。

つらい出来事をなかったことにしろ、という意味ではありません。自分の心の中で、その出来事にどれだけの力を与えるかは自分で決められる、ということです。

マルクス・アウレリウスの名言

「あたかも一万年も生きるかのように振る舞うな。死はすぐそばにある。生きているうちに、それができるうちに、善い人であれ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Do not act as if thou wert going to live ten thousand years. Death hangs over thee. While thou livest, while it is in thy power, be good.(第4巻17節)

『自省録』の中でも特によく引用される一節です。いつか善い人になろう、いつか大切な人に優しくしよう、と先延ばしにしているうちに、時間は過ぎていく。今、できるうちに、という言葉が胸に迫ります。

マルクス・アウレリウスの名言

「朝、起きるのがつらいときには、こう考えよ。『私は、人間としての仕事をするために起きるのだ』と。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:In the morning when thou risest unwillingly, let this thought be present—I am rising to the work of a human being.(第5巻1節)

皇帝でさえ、朝、布団から出たくない日があったのでしょう。この後、自分はそのために生まれてきたのに、なぜ不満を言うのか、それとも布団の中で温まっているために生まれてきたのか、と自分に問いかけています。

偉大な人物の、人間らしい一面が見える言葉です。

マルクス・アウレリウスの名言

「ふだん何を考えているかで、心のありようは決まる。魂は、思いによって染められるのだから。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Such as are thy habitual thoughts, such also will be the character of thy mind; for the soul is dyed by the thoughts.(第5巻16節)

布が染料に染まるように、心は日々くり返す考えに染まっていく、という言葉です。何を見て、何を考えて過ごすかが、そのまま自分をつくっていく。習慣の大切さを、「染める」というたとえで表しています。

マルクス・アウレリウスの名言

「最良の復讐は、相手と同じような人間にならないことだ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:The best way of avenging thyself is not to become like the wrongdoer.(第6巻6節)

ひどいことをされたとき、同じやり方でやり返せば、自分も相手と同じところまで下りていくことになります。仕返しをしたくなるほどの怒りを、自分を保つ力に変える言葉です。

マルクス・アウレリウスの名言

「皇帝になりきってしまわないよう、その色に染まらないよう気をつけよ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Take care that thou art not made into a Caesar, that thou art not dyed with this dye; for such things happen.(第6巻30節)

ここでの「皇帝(カエサル)」は、権力者としての振る舞いや特権意識のことです。この後、「だから自分を、素朴で、善良で、純粋で、まじめで、飾り気がなく、正義を愛する人間に保て」と続きます。

最高権力者でありながら、その立場に心が染まっていくことを恐れ、自分を戒めていたことが分かります。肩書きや立場を得たときにこそ読みたい言葉です。

マルクス・アウレリウスの名言

「過ちを犯す者をも愛することは、人間に特有のことだ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:It is peculiar to man to love even those who do wrong.(第7巻22節)

この後、過ちを犯す人も同じ人間であり、知らずに、心ならずも過ちを犯しているのだと考えれば、それができる、と続きます。相手も自分と同じように迷い、間違える存在だと考えることで、許す余地が生まれるということです。

マルクス・アウレリウスの名言

「内を見よ。内には善の泉がある。掘り続けるなら、それは絶えず湧き出るだろう。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:Look within. Within is the fountain of good, and it will ever bubble up, if thou wilt ever dig.(第7巻59節)

善さや強さを外に探すのではなく、自分の内側に探せ、という言葉です。ただし「掘り続けるなら」という条件がついている点が大切です。一度見つければ終わりではなく、自分の内を見つめ続けることで、はじめて湧き出るものだということです。

マルクス・アウレリウスの名言

「外の何かで苦しんでいるなら、あなたを乱しているのはその物事ではなく、それについてのあなた自身の判断だ。そして、その判断は今すぐ消し去ることができる。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:If thou art pained by any external thing, it is not this thing that disturbs thee, but thy own judgement about it. And it is in thy power to wipe out this judgement now.(第8巻47節)

マルクス・アウレリウスが影響を受けたストア派の哲学者エピクテトスにも、「人を乱すのは物事ではなく、物事についての考えである」という趣旨の言葉があります。

起きた出来事と、それに対する自分の判断を分けて考える。現代の心理学でいう認知の見直しにも通じる考え方です。

マルクス・アウレリウスの名言

「善い人とはどうあるべきかを論じるのは、もうやめよ。善い人になれ。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:No longer talk at all about the kind of man that a good man ought to be, but be such.(第10巻16節)

哲学を学び、理想について考え続けた皇帝が、自分自身に向けて書いた言葉です。考えることや語ることは大切ですが、それだけでは意味がない。実際にそう生きることこそが大切だ、という強い自戒です。

マルクス・アウレリウスの名言

「誰もが他の誰よりも自分を愛しているのに、自分についての自分の評価より、他人の評価のほうを重んじる。私はそれを何度も不思議に思ってきた。」
-マルクス・アウレリウス

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英訳原文:I have often wondered how it is that every man loves himself more than all the rest of men, but yet sets less value on his own opinion of himself than on the opinion of others.(第12巻4節)

人は誰よりも自分がかわいいはずなのに、自分の評価より他人からどう見られるかを気にしてしまう。その矛盾を、皇帝は不思議だと書き留めています。

SNSの反応や周囲の評価に振り回されがちな今の時代に、そのまま当てはまる問いかけではないでしょうか。

『自省録』が「自分へのメモ」だからこそ響く理由

『自省録』の言葉の多くは、「〜せよ」「〜するな」という命令の形をとっています。けれど、その命令の相手は読者ではなく、書き手自身です。怒りたくなる自分、評価を気にする自分、朝起きたくない自分に向けて、何度も言い聞かせるように書かれています。

同じ内容の言葉が形を変えて何度も出てくるのも、そのためでしょう。一度分かったつもりになっても、また心が乱れる。そのたびに書き直し、自分を立て直していた跡が、この本には残っています。

立派な結論だけでなく、迷いながら自分と向き合い続けた過程が見えること。それが、この本が皇帝の日記でありながら、今も多くの人の支えになっている理由なのかもしれません。ストア派の思想をさらに知りたい人は、同じローマのストア派哲学者セネカの言葉もあわせて読んでみてください。

出典・参考資料

マルクス・アウレリウス『自省録』。英訳はジョージ・ロング訳(The Internet Classics Archive 所収)で照合し、日本語は筆者が訳しました。巻・節番号はロング訳の通行番号によります。原典は古代ギリシア語で書かれており、日本語の既存の翻訳とは言い回しが異なります。

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